「天ノ少女」攻略完了しました。
本当に素晴らしいゲームでした……。
月並みな言い方ですが、TrueEndでは涙が止まりませんでした……。
やっと……時坂玲人の戦いは終わったんやなって……。
プレイヤーのこちらも15年以上の付き合いですし、ゲーム中では玲人はそれ以上の時間を戦い抜いたんですよね。このゲームを作ってくださったInnocentGreyの皆様、そして登場人物のみんな、本当にお疲れさまでした。
というわけで語りたいことはめちゃくちゃたくさんあるのですが、最初の記事なということでまずは「神曲」の天国編のチャプターに合わせつつ簡単にストーリーのあらすじをまとめておきます(一応記事の下側に攻略記事へのリンクも貼っておきます)
未プレイの人はまずクリアしてから読んでね!
ダンテ「神曲」と「天ノ少女」の対応について
本作は各チャプターにダンテ「神曲」の天国編の階層が使われています。
神曲は「地獄編」「煉獄編」「天国編」に分かれており、「煉獄」までは詩人ウィルギリウスの導きによって旅をしますが天国編ではベアトリーチェの導きによって天の高みに上っていく展開になっています。
しかし「天ノ少女」においては、主人公時坂玲人は物語の導き手である「朽木冬子」を失った後、ベアトリーチェの存在がないまま戦い続けなければいけません。
全然天国編じゃないじゃん!って思うかもしれません。
ですが、本作については、この物語は、時坂玲人だけでなく、いろんな登場人物がそれぞれのステージで「天国」にたどり着こうと人たちを描いている群像劇、あるいはそうした人々を時坂玲人視点で見届ける物語として理解すると良いと思います。
この物語は登場人物によって天国に対するスタンスが違うところも見どころです
一番神曲に傾倒しているのは「六識命」です。自分を天に導いてくれる「ベアトリーチェ=六識美砂」を執拗に求め続け、そのためなら他者をどれだけ犠牲にしようとかまわない。彼のパラノイアは葛城シンなにもその思想を植え付け、他にも多くのシンパを生み出しました。
これに対し、主人公である「時坂玲人」は天など目指そうとしておらず、冬子を失って地べたに叩き落された状態でもくじけず、苦しんでいる人たちを助けようと奮闘します。しかし、その結果彼は意識せず我々プレイヤーを至高天まで導いてくれるわけです。
非常に興味深い存在として「黒矢尚織」がいます。彼は作中作「プルガトリオの羊」や「エデンの少女」などにおいて「神曲で描かれるような天界からの脱出」を目指します。あえて天国や神の領域に背を向け、自己を獲得しようとあがくのです。
本作では、登場人物がそれぞれのスタンスで「天国」を目指しており、その道筋が交差していくことが物語が生まれるという形になっています。
※このあたりの各キャラクターごとの分析は、おいおい別の記事でやっていこうと思います
神曲で描かれた天国編とセットで「天ノ少女」のあらすじを振り返る
本記事ではイメージとして「永井豪」の「ダンテ神曲」の画像を紹介します。この作品は神曲入門としてめちゃくちゃすぐれた作品なので興味がある人はぜひ読んでみてください。
天国への旅立ち
火焔天 – 地球と月の間にある火の本源。焔が上へ上へと向かうのは、この天へ帰らんとするためと考えられた。
ちなみに天国では上や下の感覚があまりない。特別な導きがなければ移動はない。この辺りは地獄や煉獄と決定的に異なる。
第一天 月天 (前日譚。「天罰」および一人目の天使が発見)
天国の最下層で、生前、神への請願を必ずしも満たしきれなかった者が置かれる。
前日譚では「田邑 空」の死体が発見されるまでの展開が描かれますね。
天使になりたいとあこがれ続け、絵を描き続けていたのに途中で絶望して自殺してしまった彼女のことを指しているのでしょうか。(最も、神曲においては自殺は地獄送りになるのですが……)
第二天 水星天(第二・第三の天使と笹倉啓太の死体発見)
徳功を積みはしたものの、現世的な野心や名声の執着を断ち切れなかった者が置かれる。
圧倒的な技術を身に着けていたがその技術を贋作制作に向けた「前園静」や、絵が好きだったはずなのに贋作商として活動していた「笹倉啓太」、そして「前園静」を恋い慕うあまりその培った技術を投げ出してまで殺人事件を犯してしまった「窪井千絵」などがこの章の中心人物です。
「前園静」が「天罰」を描いたときはあくまでも「憧れ」の気持ちだったのですが、それが原因で妹が自殺した結果、前園静の思いはパラノイアと変質し、殺人事件につながってしまいました。
「窪井千絵」の「前園静」への気持ちも恋とかあこがれだったはずなのに、突如それが失われたことでパラノイアへと変質してしまいます。
第三天 金星天 (八木沼英理子の誘拐・殺害)
まだ生命あった頃、激しい愛の情熱に駆られた者が置かれる。
「六識命」の脱獄と、それに協力してしまった「八木沼了一」がメインの章です。
「八木沼了一」はもともと父親からの性的虐待の末自殺を図り10年以上植物状態になっていた姉への強い執着がありましたが、それを「六識命」に焚きつけられてパラノイアになってしまいます。
第四天 太陽天
聖トマス・アクィナスら智恵深き魂が置かれる。
神曲においては「見えなかったものが見えるようになる」階層なのだが、「天ノ少女」では何の手がかりもないまま一気に6年の月日が経過するターンである。
逆に言えば、この6年があってようやく「見えるようになってくる」ことを意味しているのかな。
第五天 火星天
ダンテの先祖カッチャグイダをはじめとする、キリスト教を護るために戦った戦士たちが置かれる。
「天ノ少女」では、いったん黒矢尚織や六識命のことをおいておき、少女が誘拐され殺害されるという事件で、誘拐された少女を助けるために奔走する。しかし、結果的には関係がないと思っていたこの事件が、その後のすべての問題を解決する鍵となる。
正義のために愚直に行動したことがその後の突破口になる。そういう意味でこの作品のMVPキャラはこの事件を引き起こした「鳴子昭之」といってよいかもしれない。
第六天 木星天(二周目)
地上にあって大いなる名声を得た正義ある統治者の魂が置かれる。
天ノ少女では「二周目」にあたる。
1周目で得た知識をもとにして
二周目では「窪井千絵」の海外出航を防ぎ
「八木沼了一」の自殺を阻止し、
「朽木文弥」「朽木千鶴」を六識命から守ることができる。
第七天 土星天(子供たち)
信仰ひとすじに生きた清廉な魂が置かれる。
「火星天」において救助した3人の少女たちについて
少女たちの視点から彼女たちに何があったのかを知ることができる。
この3人の子供たちのうちの一人が朽木冬子の娘(るり)なのだが……。
第八天 恒星天
七つの遊星の天球を内包し、十二宮が置かれている天。聖ペトロら諸聖人が列する。
朽木冬子の娘(るり)は黒矢尚織によって調布市深大寺(三鷹市あたり)の農家に「佐枝色羽」という名前で預けられていた。
時坂玲人は結局自分が父親であると名乗ることはなく(というより、朽木冬子も母美砂と同じく単性生殖によってるりを生んだらしい。つまりるりは正確には時坂玲人の子供ではない)、そのまま佐枝家に返すことにした。
ちなみにこのチャプターはBADENDフラグの宝庫である。朽木冬弥・朽木千鶴・六識命の三人のパラノイアをすべて乗り越えて、るり(佐枝色羽)を守らなければいけない。ここまでが「可能性」の世界であり、九天と十天はエンディング分岐があるのみ。
第九天 原動天 (GRAND ENDING)
諸天の一切を動かす根源となる天。
冬子への未練を引きずりつつも、マリス・ステラとともに歩んでいく。
マリスの役割がミユキや冬子の代わりみたいな位置づけだったのはちょっと悲しい……。
第十天 至高天 – エンピレオ(TRUE ENDING)
諸天使、諸聖人が「天上の薔薇」に集い、永遠なる存在を前にして刹那、見神の域に達する。
時坂玲人が「彼女」と再び再会することができる。
ENDING その愛は紡ぐ、太陽と すべての人々を――
ダンテは、ベアトリーチェに導かれて諸遊星天から恒星天、原動天と下から順に登っていく。
ダンテは、①地獄から煉獄山の頂上までの道をウェルギリウスに案内され、②天国では、至高天(エンピレオ)に至るまではベアトリーチェの案内を受けるが、③エンピレオではクレルヴォーのベルナルドゥスが三人目の案内者となる。
天国へ入ったダンテは、各々の階梯でさまざまな聖人と出会い、高邁な神学の議論が展開され、聖人たちの神学試問を経て、天国を上へ上へと登りつめる。至高天において、ダンテは、天上の純白の薔薇を見、この世を動かすものが神の愛であることを知る。
本作は凄惨な殺人事件が多数おきますが、やはりテーマは「愛」なのだと思う。
愛ゆえに人は狂い、人を傷つけるのだけれど、最後に愛が紡いだ数々のつながりによって時坂玲人と「彼女」は再会を果たす。
ラストシーンは、わかっていたけど時坂玲人が涙を流してくれないものだから、画面の向こうで私がぼろ泣きさせられました…。
初回限定版特典の「オリジナルドラマCD」と短編小説「彼女と手紙」についてはもうちょっと時間が経ってから紹介する予定です。なお、初回限定版およびその特典は追加生産ないみたいなので、興味ある人はなくなる前に買って憶いた方が良いと思います!
おまけ 攻略記事へのリンク
どうしても「静の罪」エンディングの行き方がわからなかったんですがまさかこんなところとは……
コメント