いよいよInnocent GreyのParannoia三部作の完結編「天の少女(からのしょうじょ)」が予約開始しましたね。
【予約】天ノ少女《PREMIUM EDITION》【12月25日発売】
「天ノ少女」発売まで約8年待ったファンの皆さん、本当におめでとうございます
今までのシリーズの発売日は以下の通りになっています。
2005年にカルタグラ
2008年に殻ノ少女(2019年にHDリマスタ版)
2013年に虚ノ少女(2019年に新キャストリマスタ版)
シリーズ初出からは15年。シリーズ最後の作品が出て数えたとしても7年と10か月経っての完結編発売となります。ファンとしては本当に首を長くして待った!という感じでしょう。
発売日までが待ち遠しいですが、まだ1か月ほど時間があるので、その間に過去作を振り返ってみたいと思います。ただ、あらすじまとめなどは探せばいくらでも見つかりますので私は「京極夏彦作品との比較」をしながら振り返ってみます。
というのも、本シリーズ作品はよく京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」との類似が指摘されているのですが、実際にどの程度似ているのかを検証している記事や動画があまり見当たらないからです。
各キャラクターの設定にどの程度共通点があるのかを検証してみるのも面白いかと思います。
※当たり前ですが完全ネタバレなので、あくまでも「殻ノ少女」「虚ノ少女」をプレイした人向け記事になります。
殻ノ少女キャラクター01 間宮心像(シンゾウ)
ではさっそく、「殻ノ少女」シリーズの一連の事件の出発点である間宮心像から紹介していきます。この人物さえいなければその後の一連の悲劇は起きなかったという、物語の起点に当たる人物です。
公式設定資料集「SHOEL」における間宮心像の設定解説
稀代の鬼才能芸術家。絵画を中心に様々な芸術作品を作り出している。生まれつき変わった人間であった。
独占欲の塊であり強欲で興味のないものには無関心。美しいものや変わったものにしか興味を持てない性質。妻の美雪が火傷から醜形恐怖症に苛まれている間、ずっと放置して仕事に没頭していた。それは新しく雇った中原美砂に魅了されていたからである。
妻の発病を境にして再生や再構築をイメージする「殻」をテーマとした作品を多く作るようになる。この辺はカトリックの家系で育ったのが意識的に影響を及ぼしているらしい。
昭和19年、心像は美砂をモデルにした殻ノ少女という傑作を完成させる。この時の心像は悪魔に取り憑かれたかのように一心不乱に絵を書き続けたという。その声を完成させた心像はますます「殻」というテーマへの執着を深めていった。
昭和20年、ついに悲劇が起きる。自分の描いた殻ノ少女に自分自身が魅入られてしまい、モデルであり女子であった美沙自身の肉体を使って本物の殻ノ少女を作りたいという恐ろしい願望に取り付かれてしまい、結局作ってしまう。その後彼女は生きたままで地下室に監禁され何度も何度も心像に陵辱された。この殻ノ少女という一枚の絵が後に凄惨な事件を乱してしまうことになる。
間宮心像の元となった京極夏彦作品のキャラクターは?
これは「魍魎の匣」に登場する美馬坂幸四郎です。
正確にいうと、間宮心像は、この美馬坂幸四郎を3つに分割したうちの1人です。そのくらいこの「美馬坂幸四郎」という存在が化け物のように強い。
美馬坂幸四郎は
①実の娘との近親相姦の結果、「柚木加菜子」(朽木冬子的ポジション)の実の父親になる
②「柚木加菜子」の四肢を切断して「匣」を作る(殻ノ少女を作る)
③「柚木加菜子」誘拐事件を起こす(身代金詐欺事件)
④「●●が連続殺人犯になるきっかけを作る」(間宮心爾をそそのかす)
のすべてを行った人物であり、「本人は一人も殺していないのに、結果として作品中で起きたすべての殺人事件の原因となっている」という恐ろしい人物です。彼の妄執が魍魎となって他の人間が人の境界を踏み越える手助けをしてしまったわけですね。
「殻ノ少女」では美馬坂幸四郎が一人でやったことがそれぞれ
①のポジションは六識命、②は朽木靖匡、③は間宮心爾、④六識命と分割されています。
間宮心像の凶悪さについて
こうしてみると、間宮心像はただの3分の1だし大したことないのかな?と思われるかもしれませんがそうではないです。
まず明確に違う点として間宮心像は人を殺しています(中原美砂殺害)。この中原美砂殺害がその後の「六識命」及び「間宮心爾」による殺害事件のきっかけになっています。
また、妻である間宮美雪の遺体を地下室に隠しています。
さらにいうと、姪である「水原未央」に対し、生活の援助と引き換えに肉体関係を迫って犯し、水原透子を出産させています。この透子が後に朽木冬子の悲劇の原因になるります。
このように若い頃の心像はかなりの性欲モンスターであったこともうかがうことができ、形は変わるものの、やはり間宮心像がすべての元凶となっています。
単純に分割されたわけではなく、やべーやつが3人に増えたと解釈すべきでしょう。
殻ノ少女キャラクター02 間宮心爾(シンジ)
次は間宮心像の息子にして連続殺人犯のシンジくん。
公式設定資料集「SHOEL」における間宮心爾の設定解説
ペンネームは葛城心。
間宮心像と水原未央の息子。マザーコンプレックスとロリータコンプレックスが混同している珍しいタイプの精神障害者。淡々とした口調であまり口数は多くない。自尊心が高く周りを見下している感がある。自分より弱者は認めない。少年期に母親が醜形恐怖症にかかり、母親から性的虐待を受けていた。次第に母親の虐待はエスカレートし、やがて心爾を殺そうとするが、心爾は逆に母親を殺してしまう。
その頃父親の助手だった中原美砂は心爾に優しくしてくれた。しかしそのうち美砂は姿を見せなくなる。代わりに父親の部屋には彼女に似た「殻ノ少女」という名の絵が飾られていたのである。心爾少年はその絵に理想の母親像を見出してしまう。その頃すでに美砂は心像によって本当の「殻ノ少女」にされてしまい地下に幽閉されていた。
ますます正気を失っていった心像は、心爾の存在すら無視するようになっていく。放置された心爾はそこにあった神曲や失楽園などの叙事詩に夢中になった。特に神曲という作品に惹かれた心爾は何度も何度も擦り切れるほど読んだという。他にも解体新書などの解剖書もたくさん読み解剖学に非常に興味を持っていた 。
やがて10歳になった頃狂った父親から逃げ、一人で生きる道を選んだ。出来るだけ父親から離れるために東京を出るが途中の山中で力尽きてしまう。そこで信愛修道会(当時は榛名荘結核保養所)のシスターである「桂木」に助けられる。
独学で文学や医学について学び、やがて新進気鋭の幻想小説家としてデビューする。彼のデビュー作「ネアニスの卵」が雑誌に掲載され、若い女性との間で話題となっている。
現在は「シェオルの殻」を執筆中。幼き頃の虐待経験と母親への妄想が入り混じった作品である。父の代表作である「殻ノ少女」に幼い頃から取り憑かれそれを無意識に追い求めているよかのような作品。やがて「殻ノ少女」に描かれている少女が夢の中に現れるようになり、現実と妄想の境界が曖昧になり自ら殻入りの少女を作り始めてしまう。この点で異常性は父親の行動に似ている。絵の中に母親の面影を見出してしまったせいである。
成長した心爾は父親の元に戻り、なぜ「母親」がここにいないのか何度も繰り返し責めた。絵の中の少女のことも問い詰めたが満足のいく回答は得られなかった。「だったら自分で作る」と言い残し消えた。そして自ら、絵の中のような美しい殻を作ってしまう。そして自分に近づいてきた少女たちを「殻ノ少女」にしていった。それは顔まで変形させるほどの徹底ぶりだった。
(小説の続きがどうしても書けなくなったので、目的地も決めず旅をしていた時に電車の中で思いもよらぬ人物に出会う。絵の中の少女であり、夢に出てくる少女「美砂」に瓜二つの少女であった。少女は月明かりに照らされて泣いていた。少女は羽を休める場所を探していたのだと言った。理由は聞かなかったが心爾はなぜか自分と同じなのだと思った。目が覚めると少女はいつのまにかいなくなっていた。名前はトウコと言っていた。あの夢とも現実ともつかぬ少女との出会い以降、さらに何も手がつけられなくなる。) ※この部分は「シェオルの殻」の文章であり現実ではない
しばらくしたある日、心爾は新聞で中学生が車にひかれて渋滞であっという記事を目にする。
というわけで、まずキャラ設定が長い!
間宮心爾の元となった京極夏彦作品のキャラクターは?
これは三人いて、一人目は「魍魎の匣」の久保竣公。二人目は「魍魎の匣」の雨宮。そして三人目は「絡新婦の理」の織作碧です。(美馬坂幸四郎成分は弱いのでカット)
一人目の久保竣公は言うまでもなく「殻ノ少女」に心酔するあまりに連続殺人を起こしてしまう部分です。幻想小説家であるところもそのまんまです。「殻」職人である水原未央が実の母親であることも、「箱」職人であった寺田が久保の父親であるところと対応しています。
ほとんどが久保そのものといってもよいですが、これだけではない。
二人目の雨宮との対応は、シンジが朽木冬子の身体を盗み出して逃亡する部分です。これは「殻ノ少女」と「魍魎の匣」で時系列が違うことが原因です。
三人目の織作碧は彼の行為が「六識命」に操られていたという部分です。
間宮心爾が連続殺人事件を起こす前に、自分の小説「ネアニスの卵」に沿った形での見立て殺人が起きます。これによって心爾はますます現実と妄想の区別がつかなくなるんですね。
そして六識命が仕掛けたように次々と殺人を起こしてしまう。このあたりは蜘蛛に操られていた道化としてのポジションが一致しています。
間宮心像の哀れさについて
間宮心爾は紛れもなく凶悪な殺人犯なのですが、もともと①母親からの性的虐待と②父親からのネグレクトで心をズタズタにされ、さらに③正当防衛とはいえ母親を殺してしまったあげく、④唯一優しかった人間が「殻ノ少女」にされてしまうというショッキングなものを見せられたらそりゃおかしくなるよね。 しかも、⑤実際の母親は間宮美雪ではなく水原未央。それでも、親愛修女会でマリスといるときは比較的穏やかに過ごせていたのに、運が悪いことに⑥「六識命」による間宮心像への復讐への道具としてロックオンされてしまった。
不幸な設定を詰め込まれすぎぃ!
そんな彼が美砂の面影を残す冬子に救いを求めるのは仕方がないといえば仕方がない。もちろん絶対に許されない話ではあるんですけどね。
と、こんな感じで「公式設定資料集」の説明紹介と、京極夏彦作品との比較を行っていきます。自己満足企画なので、どこまでやるかはわかりませんが、とりあえず主要人物は紹介しておきたいと思います。
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