Milkジャンキーシリーズ巨乳ファンタジーシリーズで有名な巨乳フェチで有名なシナリオライターの鏡裕之さんがエロゲ衰退論の話をされています。

[https://togetter.com/li/1505761]

これについて、自分では納得がいかなかったのでデータを調べてみました。

結論だけ先に書くと、私の感想は

衰退したのは「①ソフ倫に所属するメーカーによる②フルプライスの③パッケージ形式のノベルゲーム型エロゲの④店頭販売」であって、アダルトゲーム自体は衰退してないどころか過去最大の盛り上がりを見せている

だと思います。 異論反論などは大歓迎なのでぜひご意見お聞かせください。

はじめに。エロゲに限らずギャルゲ全体で見た時の過去の売り上げ推移


[http://dakuryu.sblo.jp/article/58519794.html]

そもそもとして、昔はギャルゲがよく売れたという前提がありますね。

fateですらパッケージ版は初年度売り上げ20万本程度だったそうですからギャルゲ自体の市場がいかに大きかったかがわかります。

2003年から2012年のエロゲ業界はまさに衰退の一途をたどっている


まず、パッケージソフトの売り上げ数字についてはかなり正確な数字が残っています。

[https://web.archive.org/web/20190521183257/https://dakuryu.at.webry.info/200808/article_2.html]
大きな流れとしては2003年に急激に凹んだ後、2004年はFate/staynight、CLANNADという大作が出て盛り返します。ですがその後じりじりと減少し、2007年の市場規模は2003年より悪化していると考えられます

[https://web.archive.org/web/20200510235726/https://efemeral.hatenadiary.org/entry/20121016/1350386490]


エロゲの市場規模縮小が止まらないのはここ10年ぐらい変わらない傾向です。そして近年の変化値を平均してみると約-26億円/年になりました。つまり毎年エロゲの市場規模は26億円ずつ減少しているという事になります。

特に最新のデータはオタク業界の分析に定評がある矢野経済研究所によるものなので、この数字は信用してもよいでしょう。

ダウンロード版の数字が判明しだした2013年から2016年の「ソフ倫」エロゲ売り上げ推移をみると…


[https://web.archive.org/web/20190512104807/https://matome.naver.jp/odai/2149780180315350701]


DMMなどが最近始めているソフ倫の審査を受けていないソーシャルエロゲや同人エロゲはこの中に入りませんので、注意してください。(「エロゲの衰退」とよく言われますが、実際にはエロゲは衰退しておらず、ソシャエロゲや同人エロゲは躍進が続いており、ソフ倫エロゲの一人負け状態です)


[https://xn--o9j0bk7qoi1fn42z6lo.net/archives/23073]
[https://togetter.com/li/1244562]




 

とあるように、2016年度までは「ソフ倫」に属する企業による「店頭」を通じて販売される「パッケージ型エロゲ」は確実に衰退していることがわかりますが、一方で「同人エロゲ」などその他の販路が拡大しているようです。

さらに、海外では日本発のアダルトゲームが活躍する場面も


[https://wired.jp/2018/08/26/gaming-gets-x-rated/]

[https://news.denfaminicogamer.jp/interview/171025]
ユーザーの世代交代が関係して、業界としては過渡期にあるのかなって思っています。実際に、『ネコぱら』のユーザーには18~25歳という若い人たちが多かったわけですし。

また、DL版を考慮すると最近のゲームは全盛期以上に売れているものもある。ファン世代が完全に入れ替わっているとみた方がよい


アリスソフト


ランス10の発売が好調でシリーズ累計売上本数が100万本を突破。 (出典:ハニホンX



ゆずソフト



喫茶ステラと死神の蝶


・「ドラクリオット」は累計3.5万本以上販売。(出典:トークライブでの発言
・「リドルジョーカー」は 7月までの累計でDL版と合わせて5万本超え。
・最新作「喫茶ステラ」の売り上げは過去最高といわれている(未確定)


HARUKAZE



ノラと皇女と野良猫ハート1+2セット


ノラととシリーズ。累計販売数10万本越え(公式発表

Qruppo


抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?1+2パック


新規参入ブランドながら萌えゲーアワード大賞受賞。FANZAGAME人気ランキング上位を2年間ずっとキープしており、推定売り上げ本数は10万本を大きく超える。2020年8月14日はアペンドパッチをboothで販売し好評を得るなど息の長いファンコミュニティを作ることに成功している。

Lose


まいてつ


普及版効果もあり、売上本数15万本を突破。アニメ化も決定しました。Loseは「CANDY VOICE」シリーズという同人音声作品も手掛け、日髙のり子さんを筆頭にTVアニメでも活躍する人気声優を巻き込んでブームを作り出そうとしています。

 

以前からあるメーカーでも巻き返しが起きており、響WORKSの「~CATION」シリーズSAGA PLANETSのゲームなどが広告宣伝や売り方を工夫することで安定した人気を見せるなど、ここにきて売り上げを伸ばしている会社もあるくらいです。

衰退したといわれるソフ倫商業ソフトについても売り上げも2017年からは過去作のDL販売が好調で前年比を大幅に超える売り上げが出ています。

 

 

実際にDMMやDLSiteの売り上げランキングを見ると、数万本単位で売れている作品があり、少なくともエロゲを購入する人が減ったということはあまり感じられません。

[http://www.getchu.com/pc/salesranking2018.html]

[https://al.dmm.co.jp/?lurl=https%3A%2F%2Fdlsoft.dmm.co.jp%2Franking%2Fterm%3Dfirst%2Fyear%3D2018%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

[https://al.dmm.co.jp/?lurl=https%3A%2F%2Fdlsoft.dmm.co.jp%2Franking%2Fterm%3Dfirst%2Fyear%3D2019%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

ユーザー数はかなりの人数がいるということになりますね。業界全体が満遍なく売れるようなことはなくなったり、古いメーカーが苦境に陥っているということはあるかもしれませんが、売れているメーカーは全盛期並みに売れているものもあるというのがわかります。

 

以上のことを考えると、データでの確認が必要にはなりますが以下のようなことが推測できます。
①1ユーザ当たりあたりの購買本数は確実に減っている(全財産をエロゲだけに費やすような人は減った)ため、業界全体に落ちるお金は減った
②一方で、エロゲを購入しうるユーザ数自体はかなりの数がいる
ゆずソフトの取り組みに代表されるように「一般」層からのユーザー層取り込みが非常に重要。

記事の最初に述べた通り、「エロゲブームの前にそもそもギャルゲがめちゃくちゃ売れていた」という事実はないがしろにしてはいけないと思います。

 

同人・インディースのエロゲはもはやミドルプライスで10万本クラスの作品が登場している


しかし、何よりも重要なのは「ソフ倫」を経由しない新しいエロゲの動きです

FANZAは同人ゲームの売り上げ本数ランキングを提供してくれています。
[https://al.dmm.co.jp/?lurl=https%3A%2F%2Fwww.dmm.co.jp%2Fdc%2Fdoujin%2F-%2Franking-all%2F%3D%2Fsort%3Dpopular%2Fsubmedia%3Dgame%2Fterm%3Dtotal%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

また、1位の「Teaching Feeling」や「もんむす・くえすと」が商業顔負けの売れ行きを見せたというのはご存じの方もいらっしゃるでしょう。しかも、これはFANZAだけの売り上げであり、同人ゲームに関してはDLSiteの方が売れていることもあります。「Teaching Feeling」はDLSiteでも80000本近く売れていることがわかりますね。

見ての通り、同人エロゲではノベルゲー以外にも多様な形式のゲームが発展しており、上位20位まではすべてノベルゲー以外となっているのがわかると思います。

つまり、衰退しているとしてもそれは「ノベルゲー形式のフルプライスゲー」であり、エロゲ自体には変わらず需要があり、むしろ需要は拡大している。そして、その需要は同人エロゲ側が吸収している、ということがわかると思います。価格帯が安くゲームサイズもお手頃で、かつゲーム要素がしっかりあるゲームがどんどん出てきています。biimさんの実況で大人気になった「腐界に眠る王女のアバドーン」なもすごい売れ行きとなっています。

 

具体的な売り上げ金額については、業界トップであるDMM(FANZA)のデータが見れれば一番良かったんですがこちらはセグメント別売り上げが非公開のためわかりません。しかし業界二番手であるDLSiteを運営する「エイシス」の売り上げの成長がそれを如実に示していますね。



ソフ倫を通したノベルゲーはもはやあくまで一ジャンルに過ぎないとみた方がよいでしょう。

FANZAやDLSite(ニジヨメ)のソーシャルエロゲについて


こちらもどんどん拡大していっており、業界大手のNitro Plus、AUGUSTやフロントウイングも参入しております。中にはプレイヤー数が500万人を突破するゲームも続出してあり、並みのソシャゲよりよほど成功しています。

[https://al.dmm.co.jp/?lurl=http%3A%2F%2Fgames.dmm.co.jp%2Franking%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

エロゲやってたことがある人なら、パッと見ただけで見覚えのある顔ぶれが並んでいます。

 

退魔忍のエロゲなどは一般でも市民権を得るくらいになっていますね。

[https://al.dmm.com/?lurl=http%3A%2F%2Fgames.dmm.com%2Fdetail%2Ftaimanin_rpg%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

こういうのも全部ひっくるめてのエロゲなのですよね。

 

まとめ:「ソフ倫」のパッケージゲームだけでエロゲ業界を語る時代はとっくに終わっており、DLゲームやインディーズゲームが主役になってきてる


まだまだ情報が足りてませんが、ざっくりとまとめると以下のようになるかと思います。

[su_box title="「エロゲ衰退論」についての検証まとめ" style="glass" box_color="#060707" radius="8"]・販売するプラットフォームが変わり、店頭販売は衰退する代わりにDL販売が主力になった

・30代~40代のおっさんたちがけん引していた状況が変わり、20代のプレイヤーが中心になってきた

・同人ゲーやエロソシャゲ、インディースゲーが台頭して消費が分散した

・衰退したのはフルプライスのノベルゲー界隈だけであり、これについても一部作品は全盛期に近いヒット作を生み出し、きちんと新規ユーザーの獲得にも成功している

・エロゲ全体で見たら自体は今までで過去最高の盛り上がりを見せている

[/su_box]

という感じです。

フェアリーテイルの「同窓会」からエロゲを始めた私にとって、「エロゲ」といえばソフマップなどで買えるソフ倫のパッケージエロゲのことでした。なので、ソフ倫のパッケージエロゲ市場が縮小していること自体はとても寂しく思います。それでも、今でもちゃんと良作は出続けており、それを新しい世代が楽しんでいます。そして、エロゲ自体はいろんな方面に広がっています。ならば、私たちもこだわりなく、いろんな形のエロゲを楽しんでいきたいですね。

また業界の人は業界の人で頑張ってほしいですが、ユーザーとして「ソフ倫のパッケージエロゲ」を救いたいなら、昔の自分を基準にしてエロゲ衰退論を語るなんて意味がありません。そんな自分の全盛期が2000年前半のおっさん語りなんて誰が聞きたいと思うでしょうか。それより、今からでも一本でもゲームをやって気に入ったら布教をすればいいじゃないですか! とりあえず下の動画でも見て一本でもプレイしよう!「MUSICUS!」おすすめだからプレイしよう!

[https://www.nicovideo.jp/watch/sm36316726]

[https://al.dmm.co.jp/?lurl=https%3A%2F%2Fdlsoft.dmm.co.jp%2Fdetail%2Fkgf_0011%2F&af_id=mikarin-002&ch=link_tool&ch_id=link]

 

古い話だけでなく新しいイキの良い話も読みたいという人はこちらもどうぞ。

[https://erogetoerodouga.com/%e6%b3%a1%e6%b2%ab%e5%86%ac%e6%99%af%e3%81%ae%e3%83%92%e3%83%83%e3%83%88%e8%a6%81%e5%9b%a0%e3%82%92%e7%a0%94%e7%a9%b6]

参考:今回エロゲ衰退論を提唱されている鏡裕之さんについて


鏡裕之さんは2016年にも「エロゲー」が売れなくなった理由について分析されていて[https://note.com/kagamihiroyuki/n/nf2d471dcbb10]
[https://note.com/kagamihiroyuki/n/n4d8a2555c667]

それからも、たびたび「エロゲー」が売れなくなった理由について分析記事をあげられています。[https://note.com/kagamihiroyuki/n/ne29c99a91cd9]
[https://note.com/kagamihiroyuki/n/n8af0e8a3271c]

ただ、ほかのエロゲ衰退論おじさんと違って、鏡先生の場合はただ分析されるだけでなく、エロゲーが売れなくなったといわれていた2009年頃に「巨乳ファンタジー」をヒットさせ、現在にいたるまでシリーズ作品がでるほどに人気を維持しているなどきちんと結果を出されています。

下記の記事では「どうすれば売れるか」についての方法論なども語られています。

[https://bugbug.news/b_game/1102/]
最初は馬鹿にされていてみんなに低く見られているけど、どんどんいろんな人に認められてレスペクトを受けるようになっていって、それとともに出世してレベルの高いヒロインたちとセックスするようになっていくプロセスやその快感が、ブラック企業が蔓延する今の社会では凄く気持ちよくてたまらないのだと思います。ブラック企業って、基本的に認めてくれなくて、ただ、人を馬車馬に仕立てるだけなんですよね。労働者の尊厳を踏みつぶしている。でも、『巨乳ファンタジー』シリーズは、主人公がどんどん尊厳を回復していく、どんどん尊厳を得ていく物語なんです。

巨乳ファンタジー」シリーズでは「なろう」全盛期になる前から非常に「なろう」要素の強い作品を展開してヒットを生み出してるんですね。慧眼の持ち主だと思います。

というわけで、鏡先生のエロゲ衰退論はゲーム業界の中の人として市場分析や実際に売れる作品を作った体験に裏付けられたお話であり、耳を傾ける価値があると思います。

しかしTwitterで書かれていたせいかデータの裏付けがなく、今でもエロゲを楽しんでいる自分の実感と大きくかけ離れています。本当に言ってることが正しいのか?と疑問に感じました。というわけで、ちゃんとデータで確認してみたいと思い、いろいろ調べてみたという次第です。

 

追記


この記事を書いたせいで鏡先生にブロックされてしまったので前後のツイートは確認できませんが、鏡先生は以下のように語られているそうです。(教えてくださった方、ありがとうございます)

(さらに追記。ブロック解除していただけました。鏡先生もありがとうございます)

https://twitter.com/boin_master/status/1259835561876963329

あくまで「商業エロゲ」が衰退した理由について語られていたとのことで、この記事と鏡先生の語られている内容は特に対立するものではないのかもしれません。このため、初稿における鏡先生への批判部分は削除いたしました。

改めてnoteで詳細を記述されるとのことなのでそちらを確認したいと思います。